8/19 吾妻橋を渡る

雷門で夕方、とある人たちと待ち合わせて、少し浅草を散歩してから吾妻橋ダンスクロッシングを観に行った。初日なので詳しいことは書かないけれども(特に批判的なことは内容がバレてしまうので書きません)、率直な感想としては過去数回に比べて大きく不満が残った。友人知人が驚くほど多数出演しているし、制作まわりの苦労も知らないわけではない。いろいろ世話にもなっている。できることならば手放しで褒めたいのが人情とゆうものだけど(わたしだってそりゃいろんな人と仲良くしたいし褒めたり褒められたりしたい)、いわゆる「贔屓目」みたいな態度はとりたくないと思っている。当然「媚び」は論外。崩せないものはある。もちろん純粋な「中立」なんてことはどんな状況においてもありえないのですが、とはいえ、友情・恋愛感情・義理人情・個人的な恨みつらみといったものとは別の、屹立したところで、批評眼や意見がないと劇評なんて書いていられない(1本2本ならいいけど継続してはムリ)。わたしが良いと思うものについてしかわたしは良いとは言わない。……ってそんなの言うまでもないことなんだけれども、意外にそれは難しいことなのだ。てゆうかこんなこと殊更書いてたらむしろ友達失くしそうで怖いけど。わたしはこうしためんどくさいことを常々考えている人間なのです。今ここでは書けないこともいずれちゃんと誤解のないように伝えるべき人に伝えたいと思っています。タイミングの問題はあると思うけど。

しかしですね、こうしたジレンマは何か批評やレビュー的なものを書く人間ならばみんな抱えているわけで、だから噂の真相気取りで誰と誰の人間関係がどうだからこう、みたいに鬼の首を取ったように言ってるレベル低いネットの書き込みとか見ると虫酸が走ります。無視しますけどね★


まあこんなことは本来書く必要のないことだ。大前提なのだ。これは吾妻橋にかぎらないことだけどこの機会に言うと、わたしは舞台空間や表現においては(トークの時もそう)、友情、ジャーゴン(仲間内で通じる言語)、既知の文脈(知る人ぞ知る)、は、できるかぎり遠ざけなくてはならないと思う。全然知らない、誰ひとり友達のいないような、孤独な、それでもフラッと迷い込んだ人に向けられた作品を観たい。書くほうもそう。これはわたし自身がかつてそうした人間であったからで(今もそうかも)、その気持ちは今だって強くある。10代や20代初めの、傷つきやすくしかし強がっている孤独な少年少女が暗闇でその舞台を観ている。あるいは何らかの理由で社会から爪弾きにされてドロップアウトしてる人が見つめている。その緊張感は常に持っていたい。わたしにとって「パブリック」とはこうした意味。ただ、逆にこのわたしの中の原理原則を唯一突破してこようとしてるのが快快(faifai)で、だからあの人たちのことはなんか好きなんだな……。今回出てないけど。


といってブーたれてばかりいるわけではありません。ネタバレにならない範囲で面白かったものを。core of bellsはほんとに最高だった。「ele-king vol.2」の原稿でも8月後半のブリコメンドでも密かに名前を挙げて推していたのですが(←これは自慢です、えっへん!)、予想をはるかに上回るかましっぷり!!! 楽しかったー! 上昇気流のエネルギーを感じた。毎回演目が違うらしいのでこれだけのために観に行きたいと思ったくらい。彼らの定期的にやってるイベント(WOSK presents http://www.wosk.info/)にもやっぱり行きたい。こうしたショーケースで、たぶん彼らのことを知らない人がほとんどの中で演じるのは大変なことだと思うけど(逆にそれが良かったかも?)、ブレてないなあと感じた。


大谷能生×吉田アミのユニットは実は今回観るのが初めて。大谷能生特有のストイシズムとユーモアの同居。吉田アミハウリング・ヴォイスと朗読のあわいのような領域の声がなんともエロティック。まだいろんな可能性がありそうで。もう一歩大胆に踏み込める気がする。


エロティックといえば康本雅子『絶交』も。なんか中学生くらいの童心に帰ってオトナの女性を見るような心地で観ていました。もっと観たかったけれども短編ではやむなし、なのかな。


地点は、『話セバ解カル』あらため『木堂先生』。さすがの地力を感じる。ただちょっと、テクスト上、構成上の疑問・質問も残り、そのことについてはしばらく寝かせて考えてみたいと思います。もしかしたら後半日程の演目『his master's voice』とセットで考えたほうがよいのかも。単にこの場かぎりのパフォーマンスとゆうことではなく、地点・三浦基の中で継続的に考えられていることの一端を見た気がしています。


悪魔のしるしはもっと頑張れ。


あと個人的な反省ですが、毛利悠子のインスタレーションをもっとじっくり観たかった……。帰りに、と思っていたのですが……猛反省、ごめんなさい。Q