4/4 Q新作『地下鉄』予告編

 
― さて新作『地下鉄』の話ですが、どんな物語になりそうですか?

市原 地下鉄に女の子が乗ってて、前に座ってる男の子が女の子を見てて……っていう話。

― テーマとかないんですか。

市原 テーマとか言うことにどういう意味があるんですか? なんかつまんない気がする。

― いや、テーマとかつまんない、と思う気持ちは共有しますけど、そうじゃなくて、観に来ようかな、と思ってくれてる人に対して何かイメージを伝えるとしたら?

市原 え、欲しがりますね……。んーーー、自分ってなんだろう?って感じ。でも「自分ってなんだろう?」とか超つまんないじゃん。

― そんなことないですよ。ちなみにタイトルはどうやって決めてるの? 『虫』、『油脂越し』、『プール』ときて、新作のタイトルは『地下鉄』ですけど。
 
市原 決めたくないけど決めなきゃいけないから。
吉田 チラシをつくんなきゃいけないからタイトルも考えなきゃいけない。
 
― 吉田聡子氏の宣伝美術(チラシ)のデザイン、いつも素敵ですよね。チラシのセンスがいいから観に行く、って人もいると思う。
 

吉田 ありがとうございます。チラシデザインは、学生の頃に、他の学生団体のとかちょっと担当したりもしてました。『油脂越し』の時は、運動会の写真で。さとちゃんがこういうの考えてる、みたいなのを言ってくれたのを元につくったのかな。たぶん全然その通りにはなってないけど。
市原 『プール』の時は、何枚か写真あげて、いいねって言ってて。……でもなんで肉なんだろうね? 関係ないよね。
吉田 チラシをつくるのは作品がまだできてない時期だから。さとちゃんの中で構想はあるかもしれないけど直接的には聞けないし。さとちゃんのこれまでの作風からイメージもしつつ。でも「これがチラシです!」って出されたらそうなるじゃないですか。それでいいかなって。
市原 なんかおじさん……
吉田 あ、そうだ、おじさんの目線!
市原 あの時はおじさんを書きたいと思って、おじさんが肉を見てるってなんかいいなと思った。
 
― 今度の『地下鉄』のチラシはマンションの写真ですね。普通、タイトル通りなら地下鉄の風景写真とかになりそうなものだけど。
 
市原 一個の塊の中に人がいっぱいいるのがいいね、って話をしたよね。一緒にいてもみんな違う、別々の時間が流れてるね、というイメージ。
吉田 まだ始まってないからね、チラシつくる時は。でも徐々に稽古してて、「あ、チラシと合ってる!」とか思う時あるよね。『プール』も鳥が3羽いて、出演者3人だからかな、とか言ってた(笑)。
 
― そういう意味では、「地下鉄」×「マンション」とか、「おじさん」×「肉」×「プール」とか、バラバラなモチーフが並列しているほうが最終的にイメージが膨らむのかもですね。……ところで「おじさんが肉を見てる」もそうだけど、作品の中でも、わりといつも誰かを見つめてたり、覗き見したりしてるシーンが多いよね。
 
市原 なんだろね。そんなに話しかけないから、見てる。見てるって感じですかね。見てどう思ってるかは言わない。
 
― だけど作品の中では饒舌につぶやくっていう。
 
市原 そうですね。ふふふ。
 
― そうやってモノローグが連鎖していった時に、いつのまにか登場人物がどの次元に立ってるのか混濁して謎になる感じが面白いと思います。実際にそれが物語の時間軸で起きている出来事なのか、誰かの妄想にすぎないのか。そこがごっちゃになっていく気がする。
 
市原 そういうことで結構悩んでるよね。
吉田 ちょうど昨日(稽古場で)そういう話をしたところで、今日こういう話をしたから、さあどうなるかなって感じですね。話題には出ます、今どこにいるのかって。お客さんに表明しなくても、やってると知りたいし。
 
― 俳優によっては、そこがハッキリ分からないと演じられません、という人もいるんじゃない?
 
市原 ここでお芝居をやってる、ってだけでいいじゃんと思ってます、私は。例えば「寝る前に思い出してる」というシーンをやってます、ってことでいいと思うけど、みんなはそれも「わかんない」って訊いてくる。「寝る前の状態を演じるのか、寝る前を思い出してるってことを思い出している今の状態を演じるのか?」って。……私は、全部過去にあったこととして、この場で話しています、ということなんだけど、みんなは「いつが今なのか?」ってことを訊いてくるんです。でもそれもそうですよね。そりゃ訊いてきますよね。最初はみんながみんな自分の過去を披露する気持ちで始めてほしくて、ひとり芝居で誰にも影響されずに過去の話をするってモチベーションでやってほしい。でもだんだん影響されちゃって、わかんなくなっちゃう、っていう感じなのかな。

― そういうことをやりたい?

市原 そうなってるね、という感じ。
 
― 確かに、最初の『虫』の時からずっとその「影響されていく」ということが舞台で起きてましたね。その不確定さというか、身の置き所のなさみたいなのは、登場人物の不思議な名前からして現れてる感じもしますけど。
 
市原 さっきも言ったけど、自分てなんだろう?っていう感じだよね。
吉田 私はどこにいるの、みたいな。
 
― へー。じゃ、ほんとに自分って何、とか考えてるんだ?
 
市原 えー? 人並みに考えてるんじゃないですか。
 
― あと、自分のことちょっと可愛いと思ってる人とかもよく出てきますよね(笑)。
 
市原 そうだね……。あ、でもみんな結構幸せだと思っててほしいっていうか。みんなが哀しい哀しいって感じのより、幸せで生きててほしい。不幸を自覚しててほしくない。不幸じゃねーよ、って思うから、なんとなく。
 
― なるほど……。わりとドタバタ感あるシーンとかたまにあって楽しいよね。きゃっ、とかもやるでしょ。
 
市原 やっとこっか。
吉田 じゃあちからさんのためにやっときますよ(笑)。
市原 ちからに捧げるオマージュみたいな(笑)。

― あ、それはどうもありがとう。ちょっとナメられてる感じもゼロではないけど(笑)。

吉田 でもドタバタ感あるかなあ……?
市原 スーッといってるよね。
吉田 スーッて。
市原 ひゃーって。
 
― それ擬音語すぎて意味わかんないから(笑)。さて『地下鉄』はGW期間中の公演ですが、その後のご予定は?
 
市原 12月にアトリエ春風舎で『虫』の再演です。吉田聡子先生には出ていただこうかと思って。あとまだ分からないけど、フランス帰りの竹中香子先生にも出ていただこうかと思っております。

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『地下鉄』公演情報 http://qchan9696.web.fc2.com/Q-next.html


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