6.『ガネーシャvs第三帝国』

――福井さんはバック・トゥ・バック・シアターのワークショップに行ったんですよね。

福井 最初の方に出ていた話とも関連しますが……日本人はやっぱりおとなしくて、休み時間もディスカッションにならないのがもったいないと感じました。
 ワークショップは基本的に、遊び(play)をいかに演じること(play)に変えていくかというものでした。『ガネーシャ』の俳優のセリフも、確かワークショップから生まれたんですよね。ある意味パーソナルな部分と物語がせめぎ合って、自分の体から物語を作るものだったように思います。

――ワークショップはどういうことをやったんですか?

福井 まず4人1チームで正面にゆっくり動く人がいて、その動きを鏡合わせで真似するんです。今度は別の場所に座った人が簡単な数学の問題を出して、それに答える。反対の人は、今度はYES/NOで答えられない「好きな色は何?」等の質問をする。そうして脳の固定概念、リミッターを外してからイス取りゲームのようなことをやりました。そのゲームをいかにパフォーマンスにするかということで、真剣にやったり、キャラづけしてやってみたり……。

――それが体から物語を作るということなんでしょうか。
 
福井 なのかな、と。その後に今度は一列に並んで、「私は何々です」と一人ずつ順番に言うんですね。次が「私は何々をしたい」で、最後に「私は何々を持っている」……とおなじことを言って、印象に残った台詞から一人の役をつくって演じる。そして、その人に対して周りの人がどんどん質問していくゲームをやりました。嘘をついてもいいんですよ。「私には父が100人います」「ブルース・リーと対決したい」(笑)……。BTBの所属俳優たちも楽しそうだし、私も参加して楽しかったんですが、それをいかに観ている人にも面白いと思わせるかが難しいなと感じました。

宮坂 私は去年から舞台を観はじめて、岡崎藝術座とかに洗脳されて(笑)、慣れちゃったのかF/T全部を淡々と観た中で一番ヤバいと思ったのが『ガネーシャ』でした。舞台俳優って大体の場合は健常者がやるじゃないですか。そこで障碍を持った人が出てるのがまず挑戦的で……さらにあの舞台では、物語とその人たち自身が言いたいことがぐちゃぐちゃにされてる感じや、「自分たちは障碍があるけどちゃんとわかるんだ」と俳優がパーソナルな部分も主張してくる感じが強烈だった。

中村 私は逆に健全だと思いました。全部うまくいってて、上手く作る人がいるんだなと。悪い意味じゃなく。

宮坂 障碍を持った人は俳優をやらないとみんな思っているけど、全然できるじゃん、あるべきで健全なんだ、と見せてくれた気がしたかな。

森 できるじゃんと言われましたけど、実際は大変ですよね。私が観た回では、出演者の一人がカーテンコールで出てこなかったんです。私は以前ダウン症自閉症の子どもたちと一緒に演劇活動をしていて、健常者が多い集団だったからみんなでフォローしていたけど、『ガネーシャ』は多分ほとんどが障碍のある人たちだろうから、本当に大変だったと思うんです。あんな風に形になったのは奇跡で、F/Tよくやってくれた、と。

――オーストラリアの劇団だったのがちょっとびっくりしましたね。普段、オーストラリアの演劇を観る機会なんてないから。

宮坂 でも、全然英語が聞き取れなかったです。『The Coming Storm –嵐が来た(フォースド・エンタテイメント)』はUKの英語だから聞き取れたけど、『ガネーシャ』は聞き取れないし、字幕を見ても誰が話してるかわからなくて、結構きついところもありましたね。



1.全体について(学生パス・運営など)
2.『石のような水』(松田正隆×松本雄吉)
3.『光のない。(プロローグ?)』(宮沢章夫)
4.『光のない。(プロローグ?)』(小沢剛)
5.『100%トーキョー』
6.『ガネーシャvs第三帝国』
7.字幕問題(NEXT)
8.「これから」について