1/3 マームとジプシーという創作集団

目下のところ彼らは、マームとジプシー夏の3連作『かえりの合図、まってた食卓、そこ、きっと、しおふる世界。』の稽古中。そのある日の稽古後、荻窪の焼き鳥屋でクタクタと語ってみた。Q
 

◆―― じゃがいもハニーっていつも何してるんですか?

TK(藤田) 最近はただ、語ってんだよね。
Pj(召田) うん、クタクタ語ってる。

◆―― CD「アッコねこ」に「擬音語についてクタクタ語る」っていう短い座談会が収録されてて、「ふゃ〜ゃ」みたいな変なハモり声が出てましたよね。文字に置き換えられないような。あれ、良かったなあー。

TK 擬音語って、入れるとちょっと間抜けになるのが面白いんですよね。あと他の回では何について話したっけ?
Pj  「無音」についても語ったね、こないだ。
TK 年に2、3回、実子とはそうやって明け方まで話すんです。
Pj  夜のテンションで。
店の人 はい、お待ちっ!
TK あ、ハツ来た! ここの超うまいから、ハツ観変わりますよ。
Pj  じゃがバターも来た! こないだよりいっぱいある。嬉しい。
TK じゃがいもハニーはこういうクタクタなことしか語れませんけど、いいんすか。

◆―― うん。じゃがいもハニーの連載ページ欲しいくらいです。「召田実子の人生相談」とか実は前からやりたかったし。

Pj  真剣に答えるよ、それ。……ん、これ何? こまいの一夜干し?
TK んまーい

◆―― 2人はもう7年もの付き合いとなると、盟友みたいなものですね。

TK (もぐもぐ……)ハタチになる前はらへすはらね。……でも実子は最初、黄色い水泳帽みたいな変なの被ってたんですよ。
Pj  そう、オシャレしてたの。
TK それで人見知りしてて可哀想だから、って成田亜佑美が仲間に入れてあげたんです。慈悲の気持ちで。
Pj  ……
TK 僕は桜美林に入学してすぐ、映画のワークショップで実子に出会って。こんな可愛いイモみたいなやつがいるんだなーと思った。
Pj  ……
TK でも逆に僕のほうは実子にドン引きされてたんですよ。
Pj  だってあの頃の藤田くん、ほんとに目がイカれてて、ヤバい、この人と話したらアカン、絶対話さんわと思ってた。
TK バカだったんですよ。上京して東京の人にナメられたくないと思って、あえて悪趣味な格好して。
Pj  サングラスとかね(笑)。
TK 目、合わせたくないから。むしろ逆にただの田舎モノだったなー。
Pj  すんごいカラフルなコンバースとか履いてたしね。
TK でもね、実子はほんとには引かないで付き合ってくれたんです。これ、何度でも言うけど、僕が自転車泥棒で警察につかまった時に、ずっと待っててくれたんですよ。だけどその時に実子が手に持ってたのが、なぜか、おにぎりとモンブラン……(笑)。
Pj  もうひとり友達がいたから、その子に「大丈夫だよ」って言ってあげようと思って……
TK その子も今、マームのチラシを作ってくれたりしてますね。
Pj  みんなわりと、一緒にやってきた人たち。だけど私、たかちゃんの作品自体にはそんなに出演してなくて。制作やってたから。
TK そう、俳優もみんな制作とかでサポートに回れる子が多いんですよね。

◆―― その制作能力の高さは、桜美林大学出身の人たちの強みかもしれないですね。いわゆる「劇団員」って形でのメンバーシップではないけども、高いレベルでマームとジプシーという集団を支え合っている。

TK 劇団として団結する……や、「団結する」って言葉をあえて使うけど、そういうことは1ミリも考えたことないんです。でもみんなひとつの作品に向かって走ってる、てのは確かにあるし、作品のためにしかマームとジプシーを稼働させてないって共通認識もある。ただ、作品をやる時にもっと強くなければ、とは思ったんです。柴さん(柴幸男)と横浜の急な坂スタジオで対談した時(http://p.tl/x9fr)には「兵士を作りたい」みたいな言い方したけど、そういう意味では劇団というやり方を放棄してるわけではない。長いスパンで継続して付き合わないと出てこないものはあるし、実子とも7年やってるからこそ面白いところも分かるんです。一緒にやってるメンバーとしては、あっちゃん(成田亜佑美)も伊野(伊野香織)も、8年目になる。その点で、まるまる(荻原綾)とか尾野島さん(尾野島慎太郎)は僕の中ではわりとニューウェーブですね(笑)。高山さん(高山玲子)もそう。だけど継続して作業を重ねていくことで、彼らの中にももっとディープなところがあることが分かってきた。今までやってきた、波佐谷さん(波佐谷聡)、あっこ(斎藤章子)、ミドリカワ(緑川史絵)もそう。8月までは、チームとしてもっともがくであろうと思います。

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